形成外科
2015/01/14

形成外科シリーズ ⑭ リンパ浮腫(りんぱふしゅ)

■リンパ浮腫(りんぱふしゅ)とは■


リンパ管の分布

からだの中では、血液だけではなく、リンパ液という透明な体液も循環しています。手足のリンパ液は、リンパ管の中を流れ、わきの下や足のつけねにあるリンパ節に集まりながら、最終的には静脈を通過して心臓に帰っていきます。リンパ浮腫は、この流れが邪魔されることにより手足のむくみを生じる病気です。

症状としては、手足のむくみから始まり、だんだんに進行してだるくなったり、疲れやすくなったりします。また、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という感染を起こしやすくなり、日常生活に大きな支障を生じることもあります。最終的には皮膚も硬く、乾燥し、黒ずむ変化を起こし、象皮病(ぞうひびょう)と呼ばれる状態になります。

■原因■


リンパ浮腫は、他の病気に伴わない原発性リンパ浮腫と、他の病気が原因でおこる続発性リンパ浮腫に分かれます。続発性リンパ浮腫の原因としては、乳癌、子宮癌、前立腺癌などの手術(リンパ節郭清 りんぱせつかくせい)や放射線照射後におきることが多く、手術直後から発症することもあれば数十年経過してから発症することもあります。リンパ浮腫は一般的に進行していく病気なので、これらの手術後には予防や、発症したあとには進行を遅らせる治療が重要です。
そのほかにはフィラリアという寄生虫感染症も原因となります。

■リンパ浮腫の治療■


自宅でもできる治療として、圧迫療法(弾性着衣は、リンパ節郭清後のリンパ浮腫に対する療養費支給の制度があります)や、用手的リンパドレナージ(リンパの流れにそったマッサージ)があります。ただし、これらの治療法ではリンパ管の流れを新しくつくりだすことはできず、予防や進行防止が主な目的です。
そこで、形成外科では顕微鏡を使ってリンパ管を静脈につなぐ「顕微鏡下リンパ管静脈吻合」という手術治療をおこなっています。

リンパ浮腫の術前術後

■顕微鏡下リンパ管静脈吻合(けんびきょうか りんぱかん じょうみゃくふんごう)■


0.1~0.5mmほどの細さのリンパ管を。顕微鏡を使って静脈につなぐことにより、手足のむくみの原因となっているリンパ液を血管に送り込みます。吻合に必要なキズの長さは約2~4cmと小さいため、数日間入院となります。この治療は、健康保険が適応されます。
顕微鏡下リンパ管静脈吻合は、あふれかえったリンパ液の排水溝を、手術でつくりだすという治療法です。したがって、この手術単独での手足のむくみ軽減効果に加えて、圧迫療法や用手的リンパドレナージを術後におこなうことで、相乗効果を期待できます。

 

細さ0.3mmのリンパ管(上)を1.5mmの静脈(下)につないだところ

細さ0.3mmのリンパ管(上)を1.5mmの静脈(下)につないだところ