診療科のご案内
緊張した時に冷や汗がでることがありますが、これは自律神経の一つである交感神経が過敏に反応して起こるもので、精神性発汗と言います。一方、運動の後や体温が上昇した時にかく汗を温熱性発汗といい、体温調節に不可欠の生理現象です。精神性発汗は誰にも認められるものですが、過剰な発汗がみられる場合は多汗症の疑いがあります。ほとんどの人が4、5歳くらいに発症し、中学生、高校生頃に気になり出すため、思春期の患者さんが目立ちます。多汗症はまれな病気ではありません。甲状腺機能亢進症など、他疾患が原因であることもあり、専門医の診察が必要です。
汗は、脳からの指令が脊髄、交感神経を通して汗腺に伝達されてでる仕組みになっており、交感神経が発汗を促し、副交感神経が抑える働きをします。多汗症は交感神経の緊張状態が過敏になって現れる症状であるため、交感神経の働きを抑えれば汗を止めることができます。従来の治療法は、汗の分泌を抑える薬物による内服療法、制汗剤や軟膏などの外用療法、自律訓練などが行われていましたが、いずれも一時的効果にとどまっていました。近年、内視鏡を用いる胸腔鏡下胸部交感神経切除術(小さなカメラを胸の中に入れて行う手術)が行われるようになりました。手のひらや腋(わき)にいく交感神経は胸部にあり、足の裏にいく交感神経は腰部にあり、胸部交感神経切除術の対象となるのは、手掌多汗症の患者さんで、社会生活に影響がでるほど重症の方に限ります。
① 効果は手術後すぐに現れ、手のひらの汗はほとんど止まります。わきの下や足のうらの発汗の停止は個人差があります。手のひらの汗を止めるための手術ですが、術後、約40%から50%の患者さんのわき・足の裏の発汗が減少もしくは、停止することがあります。
② この手術で一番問題となるのは代償性発汗で、手のひらの汗が止まる代わりに、高温の環境では背部、腰部に汗が増える傾向があり、それが、新たな悩みとなるケースがあります。
③ 多汗症の手術は受けないと病気が進行したり、健康を阻害するものではありません。従って手術によるメリットとともにデメリットも含め、手術の内容について充分に理解し納得してからのぞむことが大切です。
④ この手術は交感神経を切除するため、後々に代償性発汗のためにあらたな悩みがおき、手術を後悔されても、切った交感神経を再び元に戻すことは現在、不可能です。
⑤ 満足度、代償性発汗の程度も個人差があります。特に代償性発汗については、外来を受診し、詳細な説明を聞くことが重要です。
左:交感神経切除
壁側胸膜を切開し交感神経をENDO HOOKで吊り上げることにより肋間動脈、
交感神経分枝の同定ができます。(←→の部分を切除)
右:交感神経焼灼術
肋骨上で→の部分を電気メスで焼きます。
② 過去に胸部の手術(気胸、肺結核など)を受けたことがある患者さんも癒着の可能性が高く適応からはずれることになります。
③ 小学校低学年で身長が145cm以下の患者さんも、手術器具の関係で適応外となります。
④ 職業的には、術後の代償性発汗を考慮すると、大半を屋外で就労する外交員、土木関係の患者さんも回避の対象となります。
⑤ 腋臭症(わきが)の方も、この手術の対象になりません(形成外科への受診をお勧めします)。
⑥ 多汗症の手術は、手を使う職業に携わっている方に最も必要となります。
1.症状:てのひらや腋(わき)や足底に異常に汗をかく。特に緊張時。精神発汗である。
2.入院期間:術前検査は全て外来で行います。
1泊2日コース(当日朝の入院、午後からの手術)
3.費用:保険本人:両側胸部交感神経切除(全身麻酔) → 16万7300円程度。
*高額医療費扱いは8万100円以上で差額は所定の手続をとれば申請により払い戻しが可能。詳細は医事課まで。
3.外来での多汗症の説明のパンフレット
4.外来で代償性発汗についての説明書を熟読していただく
5.外来での診察・相談(約1時間を要します)