診療科のご案内
肺は身体の上半身に左右2つあります。右肺は上葉、中葉、下葉の三つに分かれています。左肺は上葉、下葉の2つに分かれ、合計5つのパーツに分かれています。左右の肺に包まれるように心臓があります。
肺の働きは呼吸です。肺の中の肺胞という部分と血管の間で酸素と二酸化炭素の入れ替え(ガス交換)が行われます。動脈血に酸素と栄養分を入れて、心臓から全身へ送り出します。全身で使われた血液が静脈で二酸化炭素などを心臓・肺へ戻し、また、ガス交換を行います。このように心臓とともに肺は重要な臓器です。この機能がうまくいかいないと心配(心肺)です(図1)。
肺がんは、正常な細胞に遺伝子の変異が関与し、異常な細胞に変化して起こります。肺がんは遺伝子が関与する病気です。肺がんは発生すると無秩序に増殖するため、腫瘍という塊(かたまり)ができます。最初は肺の中のみで増殖する早期の肺がんの形をとりますが、放置すると身体の他の臓器にも転移して治療が困難な進行肺がんになります。早期の肺がんは治療手段として手術を行うことがありますが、進行した肺がんでは手術のみでは治療が困難で、抗ガン剤、放射線などの追加治療も必要となります。
大いにあります。図2は喫煙者の肺と非喫煙者の肺です。1日の喫煙本数が多いほど、喫煙年数が長いほど、肺は黒っぽくなり、リスク(危険性)は高くなります。たばこは肺がんのみでなく、咽頭がん、喉頭がん、気管支拡張症、肺気腫の発症のリスク、肌の老化(図3)など、全身に悪影響を及ぼすことが知られています(図4)。非喫煙者を1.0とした場合の各疾患での喫煙者では死亡率が高くなります(図5)。女性では早産、死産、低出生体重児の原因となります。肺がん治療の第一歩は永久禁煙です。
双子の姉妹の写真でわかるように左側の喫煙者は明らかに、顔面、特に目尻、顎(あご)の部分のしわが目立ちます。良く見ると歯の白さも異なります。たばこは皮膚、歯にも影響します。これも心配(しわ)です。
① 胸部X線写真・胸部CT
基本は胸部X線写真ですが、最も良いのは胸部CTです。腫瘍径が大きな肺がんは胸部X線写真でも確認できますが、小さくて、早期の肺がん、あるいは鎖骨の裏、横隔膜上、心臓の裏など重なって見えにくい所は、胸部CTがより確実に病変のチェックが可能となります。
② 気管支鏡検査
画像上、異常が見つかったら、診断のために細胞や組織を取って調べる方を生検と言います。空気の通り道である気管や気管支を観察し、直接あるいはレントゲン透視下に金属の鉗子で疑わしい部分を調べる方法です。病変部をつまんだり、こすったり、洗ったりすることによって細胞を採取します。肺の検査の中では最もきつい検査ですが、治療方針決定のためには必要です。
③ CT-ガイド下生検
上記、気管支鏡検査で確定診断が得られない場合に行うことがあります。胸部CTを撮影しながら、体表に記しをつけて、病変部に検査用の針を刺し、細胞を採取します。
④ 胸腔鏡下肺生検
気管支鏡、CT-ガイド下生検でも、診断がつかない場合は全身麻酔下に胸腔鏡を使用し、直接、肺の一部の生検を行い、その場で病理診断を行い、治療方針を決定します。
肺がんの進行度(臨床病期)によって、治療の方法(手術、化学療法、放射線療法、免疫療法その他)の決定のためには全身の評価が必要です。全身評価の方法として頭部MRI、PET-CT検査、一般採血、肺機能検査、心電図、動脈血液ガス分析などが有用です。現在では、PET-CTで全身のチェックが可能であり、がんの発生部位や転移の部位を調べる検査です。骨シンチグラム、Gaシンチグラムなどは必ずしも必要ではなくなってきました。
最も多い症状は咳、痰ですが、かぜでも同様な症状はみられます。血痰(痰に血が混じる)なども症状の一つです。脳転移があればふらつき、頭痛などがみられ、背部痛、肩痛、麻痺などがあれば骨への転移、声がかすれる(嗄声)ときは神経への浸潤の可能性があります。しかし、多くの場合、無症状で検診、他疾患治療中、他疾患の術後経過観察中に胸部X線写真上や胸部CT身で偶然、発見されることが多いようです。
大きく分けて①小細胞がんと②非小細胞がんの2つに分かれます。①と②とでは、外科治療、抗ガン剤の種類、腫瘍の性質が異なります。
肺がんの組織型 | 進行の速さ | 割合 | 起こりやすい部位 | たばこ | |
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小細胞がん | 速い | 15% | 肺門・肺野 | 関係強い | |
非小細胞がん | 扁平上皮がん | ゆっくり | 30% | 関係強い | |
腺がん | 50% | 肺野 | 関係あり | ||
大細胞がん | 5% | 関係あり |